anriokabe.com / 短歌を詠む

2023.11.12
いつまでもねむれないのは暗やみがわたしを魅了しつづけるから
夕焼けがとてもきれいでもうこれで僕たち終わりかもしれないね
ほんとうはそこには星があるのかもしれないけれどなにもみえない
わたしだけ誘われなくてとぼとぼと月といっしょに家までかえる
あまりにも世界がノイズすぎるのであたまのなかにながす音楽
ひとりだけ指をくわえて待っているときのまったく味のない指
迷宮のようにひろがるこの街でいつも迷子のままの僕たち
2023.11.05
むこうから居心地のいいさみしさがやってきていてそこにおさまる
だんだんと夜はあつさもやわらいでだあれもいないのも心地よい
なまぬるい日々にひとつのスパイスを加えるようにチャイを飲みほす
言葉にはならないものをうたにして伝えることのできる能力
はしってる電車のなかにえいえんに閉じこめられているわたしたち
ふいている風で葉っぱがゆれていてそのことだけで十分だった
いろいろなひとたちがいていろいろなことに夢中になっている星
2023.10.29
月に手はとどかないのでそこにある団子にわたし手をのばします
どこ行けばいいのだろうとおもうときお日さまいつも僕につめたい
対面にいるひとたちのおしゃべりをBGMにしながら食べる
気がつくとひとりでいつもあるいてるひとりもひとのいないところを
まるでこの飲みこみづらいものすべて丸飲みしろと言わんばかりの
おふとんのなかでしずかにまるまって呪いがとけるのを待っている
ふりそそぐ太陽すべてざくざくとからだに刺さりながらゆきます
2023.10.22
生命のみなぎっている草むらのよこを猫背のわたしがとおる
その線をこえたらきっとこちらには生きてかえってこられない線
あんぐりと口をひらいてわたしたち天からおちてくるものを待つ
なぜこんなやる気でないのだろうってなってるときのなまぬるい風
とりあえずいちめん青に塗っといておきましたよというように空
ぽっかりとわたしのなかにあいている穴につめたい風がふきこむ
わたしたちみんなひとりで人生のままならなさを抱きしめながら
2023.10.15
アイフォンの画面がいつもわたくしの顔面のすぐまんまえにある
ほとんどのことはどうでもいいことで今ここにある風をかんじる
真夜中のマクドナルドで乾電池ぬかれたようにねむるひとびと
生きていることがこんなに楽しくてたまらないっていうように犬
うしろからやってきている自動車に先をゆずってたらたらと道
やむまでを待っているときさらさらとわたしのなかに降っている雨
わたしたちまるでこの世の終わりかもしれないねって雨にうたれて
2023.10.08
あたたかい風をかんじて走ってるかなしみのないあすへむかって
なんとなく大人になってなんとなく大人みたいなふるまいをする
わたしたちいつになったら人間になれるのかなあなれるのかなあ
システムのひとつのネジである僕のひとつのネジとしての働き
お行儀がいいようだけどほんとうは仲間はずれがこわいだけです
標準になることだけをおそわった僕のはなしている標準語
たらたらとあるいてわたしどこまでもゆきますわたし自身の足で
2023.10.01
どのくらいあるいてきたのだろうかと思ってうしろふりかえります
あしたには空が空からおちてきて日々が日々ではなくなるだろう
お風呂場の鏡のなかにいるやつがじろじろこっちにらんでやがる
コンビニのペットボトルのまみどりの飲みもの喉にながしこんでる
なつかしい野原をとおりぬけるときわたしの足にからみつくもの
ああ鳥が鳴いているなとおもったらスマホが鳴いているだけだった
手をつなぎあっていっしょにみにゆこうこの星が燃えつきてゆくのを
2023.09.24
ひもすがらなにもする気もおきなくてなにもしないということをする
わたしたちみんな海からやってきてコンクリートで干上がっている
またいつかいつかと言っているうちに会えなくなってしまうよいつも
たどりつくまでのあいだに体力をつかいはたしてたどりつけない
もう二度とわかりあえない程度にはすぎてしまった僕らの時間
わたしたちもうみることはないだろうあの日いっしょにみた風景を
ひんやりとしている夜のお月さまひとりで空にとりのこされて
2023.09.17
泣いているみたいにいつも鳴いているわたしはまるでただの鳴き虫
とりあえず顔をあらってみたもののわたしはなにも変わらなかった
デジタルのいちまんえんは顔がない顔のかわりに数字だけある
玄関をひらいて外にでるまでは前むいていたはずなんだけど
つぶれてる枕のうえにずっしりとずっと置かれている頭蓋骨
すずむしのりんりん鳴いている夜をりんりんひとり歩いています
むしむしとしている夜を這っているわたしはひとのふりをした虫
2023.09.10
いつだって光を直視することに耐えられないさ 僕たちの目は
自販機のあわいひかりにさそわれてあつまってくる虫と人間
そこにあるボタンを押してじりじりと何かが起きるのを待っている
遠まわりしながらかえるまっすぐにかえればすぐにかえれる道を
こくこくと時計の針のきざんでる音にわたしはきざまれている
しっかりとつかまっている急停車してもふりとばされないように
感情がわたしのなかにやってきてすぎさってゆくまで目をつむる