anriokabe.com / 短歌を詠む

2024.01.21
あたらしいレンズをいれてあたらしい視界で街をあるいています
どうやって消化をすればいいのですこの胃のなかにある不快感
石けんをたっぷりつけてごしごしと僕のよごれをおとしています
あるいてる音がきこえるもう誰もあるいていないはずの場所から
むこうからくるひとみんな僕のこと避けているかもしれない夜道
のんびりとあるいているとのんびりと空もながれる星もながれる
コンタクト外すとなにもみえなくてなにもみえないことをたのしむ
2024.01.14
わたしたちまるでひとりでこの星にとりのこされたようにさみしい
がっしりと閉じられている空間のなかにわたしは閉じこめられる
むこうからわたしのことをみおろしているひとがいてみあげるわたし
ねころがりながら世界のひとたちとゲームのなかでたたかっている
すべらないようにいちだんいちだんをたしかめながらおりる階段
群れているひとたちがいてその群れにわたしはまぜてもらえないので
とおくからピアノの音のする夜をぽろんぽろんとあるいています
2024.01.07
ここにいるわたしこれでも人間をどうにかやっているつもりです
ななめから差してきている太陽がわたしのことをななめに照らす
さむくってたまらないのでもうすこしあったかくしてください風を
たくさんのひとがたまっているところぐるりと迂回してかえります
もうにどと会うことのないひとたちの夢をなんどもみせる脳みそ
ぺこぺこのからだを水でたぷたぷにしたあと米でぱんぱんにする
ほんとうは世界はみんなまぼろしで指をぱちんと鳴らせば消える?
2023.12.31
むこうからつめたい風がひゅうるりと吹いてきている胸のおくまで
食べて寝るだけをしている正月はただ食べて寝るだけをしている
くりかえしくりかえし手をあらいますつめたいですねつめたいですね
人間がマナーモードになりながら電車のなかですわっています
たおれこむわたしのからだしばらくののちにすっくと立ちあがります
遠くまで遠くまでゆくここにいるここにいるのはつまらないから
いろいろと言われたことをひとつずつお湯にとかしてみんなわすれる
2023.12.24
明日にはあれをああしてああもするそうしてこれをこうしてやるぞ
クリスマス人間たちがしゃんしゃんと鈴を鳴らしてあるいています
なぜいつも黙ってついてくるのかな黙ってついてくるのかな月
かたいもの噛んでいるときかたいもの噛んでいる音あたまにひびく
暗やみのなかをまっすぐあるいてるその先にあるものを目指して
わいわいとずっとしているひとたちのわいわいだけがずっときこえる
このひろい世界にぽんとわたしたち放りだされて踏んづけられて
2023.12.17
ひとのこと好きになれない日もあってひとりでそんな日はすごします
さむいので雪がふるのでふとんからいつまでもぼく出られないので
かなしみを抱きしめながらすわってるなにもなかったような顔して
そこにある闇の奥からにょっきりと孤独がやってきてこんにちは
すこしずつすこしずつではあるもののすべてがこわれゆく確実に
つまらないタスクを消化したあとにつるつるのそば飲みこんでいる
ねむってるあたまで街をながめると街ゆくひともみんなねむそう
2023.12.10
ひとつだけわかったことはなにひとつあなたのことがわからないこと
羽があるくせに道路のまんなかをのっそのっそとあるいてる鳥
ただ僕はキャッチボールをしたいだけなのにボールがかえってこない
いつだってインターネット空間でわたしインターネット人間
ゆっくりとお湯につかってあたためるわたしのなかにある冷たさを
そこにある暗やみに手をつっこんで確かなものをつかもうとする
いろいろなひとがなるほどこの世にはいるのだなあとなっている駅
2023.12.03
ふとんから出られないので出られないまま生きてゆくことにしました
わたしたちじっとしずかにうつむいて痛みがとおりすぎるのを待つ
さむいのはさむさのせいかさみしさのせいかあるいはその両方か
空気にはなにも書かれていないのに空気を読めといつもいわれる
ぱっかんと晴れわたってる青空があたまのうえにぱっかんとある
正しさの型を押しつけられていて型のとおりになってるわたし
あのころとなんもかわらんスピードで吸いこむカップラーメンの麺
2023.11.26
おとなしく椅子にすわって遠くまで運ばれてゆくホモサピエンス
うっすらと冷たい雨のふる街をふたりはだまりこくってあるく
大雨のあがったあとのこの街のあちらからひとこちらからひと
言葉ってやつはいつでも僕たちをバラバラにしてしまうのだった
わたしだけゲームの外で待っているゲームの中にいるひとたちを
あまりにもあっけらかんと青空があんなところにあってまぶしい
むこうからつめたい風がふいてきてうばわれているわたしの温度
2023.11.19
自転車にのってわたしはゆっくりと漕いでゆきます月にむかって
びゅーびゅーと冷たい風がふいてきてみんな遠くへ飛ばされてった
カマキリは細いからだで世の中にむかってひとり鎌をかまえる
地下鉄が時間どおりにやってきて時間どおりにみんな乗りこむ
どうしろというのよこんな真っ青な空をまっすぐ投げつけられて
脳内で鳴ってるペットサウンズに耳をすましているから平気
右にいるひとも左にいるひともみんなスマートフォンをみている