anriokabe.com / 短歌を詠む

2024.03.31
輪のうちでわいわいしてるひとたちのことをわたしは輪のそとでみる
あっちではあなたは笑顔だったのにこっちにきたらあなたは真顔
深くまでおちてしまってこの世までなかなか浮いてこられないので
なんとなくさみしくなって家をでてさみしくなって家までかえる
たいくつでたまらないのでたいくつでたまらないって顔をしている
あたたかいところにわたしやってきてあじわっているあたたかい風
井のなかの生きものみんな外にあるものをみることなく死んでゆく
2024.03.24
まっすぐにあるいていたら死んでいたかもしれないという世界線
玄関の鍵をしっかりしめながらひとりぼっちのいまをたのしむ
亡くなった祖母ののこした孫の手をつかってひとり掻いてる背中
はいるものだけをポッケにつっこんで遠くへ逃げてゆくわたしたち
歩いてるみたいにみえているのかもしれないけれど走っています
かなしみについてひとりで考えてみたけれどよくわからなかった
意味のあることを言ってるつもりでもわたしたちほらこんなに無意味
2024.03.17
かんがえるのをやめようとかんがえるのをやめようとかんがえる夜
ずるずるとコーヒーすする音させてずるずるとはじまる月曜日
ほんとうにあるのだろうかあのドアのむこうにいつもどおりの世界
もういちどまぶたをとじてゆっくりとさみしい夢のつづきをみます
あしたには空から星がおちてきてみんなこわれてしまうとしても
目のまえにあるものみんなもしかしてわたしの脳のなかのまぼろし
わたしにはどうすることもできなくて雨がやむのをただ待っている
2024.03.10
まっしろになってわたしはおとなしくすわっていますまっしろの部屋
僕たちの街をゴジラが踏みつけてゆく光景をただながめてた
いつもより重力すこしつよいからいまいち動けなくなってる日
ひとりずつひとりずつひといなくなるいつかわたしもいなくなるひと
あたたかいシャワーを浴びてながしますあたまのなかにある黒いもの
会ってないうちにあなたは遠くまで行ってしまってかえってこない
たてものの外をあるいているひとのことを内からみているわたし
2024.03.03
からっぽのわたしのなかにまっくろのコーヒーながしこんでいる午後
むこうからたくさんひとがやってきてわたしのことをすりぬけてゆく
ほんとうにまじめに生きる気をなくすニュースを指でスライドさせる
わたしにはまったくなにもわからないあなたがなにを言っているのか
いつまでもなくしたものをさがしてるみつからないとわかっていても
まだなにも入っていないからっぽのわたしのなかになにを入れよう
真夜中をあるいているとまるでこの世界はわたしたちだけのもの
2024.02.25
真夜中のアスレチックのてっぺんに立ってひとりで星をみあげる
ゆらゆらとバスにゆられてどこまでもゆきますバスのゆくところまで
コンビニでなにかを買ってかえろうとなってなにかをさがしています
おとなしくすわっていますどっちみち同じところに着くのですから
ひとりでも暮らせるようにつくられたテクノロジーのおかげでひとり
連絡をとろうかなってなったあとやっぱりやめておこうかなって
うすぐらいところでのぞきこんでいるスマホのむこうがわの世界を
2024.02.18
さわやかな青春なんていうものがこの世のなかにあるということ
なぜひとはにくしみあうのだろうって花にきいても花はこたえず
幽霊のようにゆらゆらするわたしすこしつかれているかもしれず
曲がりかどあってわたしは曲がるのか曲がらないのか迷ってるひと
びりびりに剥いてしまったくちびるの血のあたたかさ確かめながら
ビニールの袋をあけてなかにあるものをつかんで口につっこむ
こわれてるのかもしれないこわれてるのかもしれないぼくたちみんな
2024.02.11
ほんとうにやりたいことをやるためにあまりやりたくないことをやる
わたしたちじぶんのもっている傘でじぶんのことをまもるしかない
わすれようわすれようっておもっても脳みそわすれさせてくれない
あたたかいお湯をあたまにあてているあてているそのあたたかいお湯
うたえなくなってしまったわたしたち言葉のなかに閉じこめられて
道ばたでラーメン食っていることを幸せとして飲みこんでいる
わすれてはならないことをなにもかもわたしはきっとわすれてしまう
2024.02.04
ほんとうはかえるところがないことをかえりの道でかんがえている
すぐそこにおおきな穴があいていてすとんと落っこちてしまいそう
さようならさようならって言いながらみんな遠くへ行ってしまった
おはようと声をかけても僕のことむししていってしまうのらねこ
手をぎゅっとにぎって僕のなかにある火の熱量をたしかめている
消すことのできない過去をごしごしとこすればこするほど黒くなる
あたたかくなるまでわたし待っている毛布のなかでまるまりながら
2024.01.28
脳内にひろがっているワールドのなかでしずかに暮らしています
ほんとうにわたしはこんなことをするためにうまれてきたのだろうか
人間がフードコートにやってきてコートのなかでフードを食べる
わたしからすべてをうばいとることはできないのです嵐でさえも
にせものの葉っぱいっぱい生えている街にいっぱい生えているひと
目をつむる 意識レベルをすこしずつ落としていってさよなら世界
いろいろないろでわたしをいろいろなきもちにいつもしてくれる花