anriokabe.com / 短歌を詠む

2024.06.09
とりあえずわたしはここにいるけれどわたしはどこにいるのだろうか
なんらかのことを話しているひとのそのなんらかをなんとなく聞く
わたしたち仲よくなって仲わるくなって会わなくなってさよなら
なめくじのゆっくり這っている午後をゆっくり這って遠くまでゆく
なにもかも投げだしたくてたまらないなにもないこの空にむかって
きっとこのひとりで生きていることも生きているっていうことだから
置いてあるベルを鳴らすと置いてあるベルに呼ばれたひとがでてくる
2024.06.02
ひとはひとなのでわたしはひとりでも歩きますこのわたしの道を
かなしみについてわたしはかんがえるだってかなしき人間だから
どうしたらこのたいくつを倒せるのだろうとずっと考えている
つりかわにつかまりながら立ってたら知らない駅に着いていました
ひとなみにわたしは今を生きているつもりだけれど生きているかな?
立っているひとが横目でにらんでるとなりに立っているひとのこと
ものすごくおおきな虚無がやってきてどうすることもできなくて虚無
2024.05.26
えいえんにひとりで雲をかぞえてるひとりもひとのいないところで
うすぐらい部屋でわたしはまぼろしをみているのかもしれないね午後
どろどろとしているものがあふれだすわたしの脳の奥のほうから
お日さまにあたためられてほかほかとからだが夏になってるわたし
まっしろの蝶にひらひらつれられてまひるの夢へまよいこみます
いまだけは光っていたいいつかこのわたしも消えてしまうとしても
ためいきを吐いているときたましいも肺からすこし吐いているかも
2024.05.19
ご購入いただきましてありがとうございますまたお会いしましょう
道ばたにいっぱい生えている花をおうちにもってかえってかざる
重いものかついで立っているときの重いものめりこんでいる肩
立っているひとたちみんなうつむいて耐えているその耐えられなさを
愛ゆえに愛することの意味さえも愛がつたえてゆくのでしょうね
ミニマルに生きられたらとおもうけど生きているってだけで過剰だ
かなしみを噛みしめながら立っている噛みしめたって味はないけど
2024.05.12
むつかしいことをあたまでかんがえるむつかしいかおしてかんがえる
うたったりおどったりしていたいだけあなたとインド映画のなかで
鳥だってあんなにうまくおともだちつくっておそら飛んでいるのに
立っているわたしのまえに窓があるここからは手のとどかない窓
ねむりたいときにはねむれないくせにねむりたくないときにねむたい
天井のうらをあるいているものにずっと踏んづけられている夜
どうしたらここから外にでられるのだろうとずっとおもってる家
2024.05.05
ぐーぱんで殴ってほしいぐーぱんでわたしも殴りかえしますから
ばんばんと闇にあるもの撃ちまくる手をてっぽうのかたちにかえて
むかしよくあるいた道をあるいてるむかしよくみた空をみながら
あさがきてよるがきたあとあさがきてよるがきたあとあさがきてよる
もうなにもしたくないときもうなにもわたしはしたくないもうなにも
ゆっくりとつめたい空気すいこんでゆっくり吐くとあったかいです
透明になってわたしはあるいてるたくさんひとのあるいてる街
2024.04.28
わたしにはななめにみんなみえているななめのめがねかけているから
今日もまた本屋の奥にやってきて僕はこたえをさがしてるけど
真夜中のマクドナルドにやってきてマクドナルドにあるもの食べる
おそとまで出てきてわたしとりあえずおなかのなかにものを入れます
ものすごく遠くからでもよくみえるコンビニエンスストアのひかり
棒きれになってわたしはたおれてる木から切りはなされた棒きれ
わたしたちルールの中でしゃべってる愛はルールの外にあるのに
2024.04.21
ゆっくりとここに歩いてやってきてゆっくりとみるここにあるもの
まぼろしの桃をあなたは東京でみつけることはできたのですか
おばあちゃんこの世にはもういないのにおしゃべりをしている夢の中
もし僕がこのまま野垂れ死ぬのならこの血はどこの土地にながれる
ころころと坂をころがりおちてきて惰性でとおくとおくまでゆく
おもいでのなかにあるその風景をたどってあるくふるさとの道
いまだってあなたのことをおもいだすさみしくなってしまったときに
2024.04.14
がらがらとおおきな音をたてながらくずれる昨日まであったもの
おつきさまおそらでいつもしらしらとわたしのことを知らんぷりして
まっすぐに線の引かれている道をまっすぐ線のとおりにあるく
いつまでも何かを待っているような気もするけれどいったい何を
いつのまに春めいていて生きていることがここではこんなあかるい
ねむってる街でぽつんとついているわたしのなかの消えないひかり
どうしてもやるきのでない土曜日をどうすることもできなくてねる
2024.04.07
まっピンクだなって花の咲いているところを灰のわたしがとおる
さむさには慣れているからひとはだのあつくるしさのほうが問題
あまりにも春のひざしがまぶしくて目をあけていることができない
ほんとうはわたしはどこか遠くまで行きたいのかもしれない4月
おもいでのなかにいるひとたちのことおもいだそうとしても顔なし
この街のどこかにきっといるだろうあなたは何をしているだろう
会ってないあいだにもやでおおわれて忘れちゃったよあなたの笑顔