2024.08.18
べたべたと顔いちめんにクリームのバリアを張って外にでかける
もう二度と会えないのかもしれないねもし一度でもすれちがったら
思春期をたのしんでいるひとたちがたのしんでいるその思春期を
ねむいのにねむれないときねむいのにねむれないってことだけがある
あるいてるあいだにすこしすこしずつリズムの合ってきているふたり
いつまでもわたしのなかでじりじりと火がくすぶっているからあつい
つかれてるわたしについているつかれつるつるお湯でとっておつかれ
2024.08.11
かけていたはずのめがねがなくなってめがねがないとめがみえないね
すわってるひとたちみんなするするとスマホに指をすべらせている
とぼとぼととぼとぼとゆくとぼとぼととぼとぼとゆくとぼとぼとゆく
くやしさにうちひしがれているときの夕日どうしてこんなに赤い
下がってるときにむりして上がろうとしてもたいてい下がってしまう
おおごえでおおさわぎしているひとのおおさわぎしている声をきく
しっかりとリードによってつながれるにんげんとそのにんげんの犬
2024.08.04
さいごにはわらいたいこのわらえないことのつづいている日の先で
いつどこにいてもわたしはういていてふらふら遠くまでとばされる
またいつか会えるだろうかわたしたちあのころいつも会ったみたいに
イキってるひとにいきなりイキられて生きるのつらくなりつつ生きる
うつぶせのわたしのうえにうつうつとずっと浮かんだままのゆううつ
まだ生きているはずだけどもう生きていないみたいな時間をすごす
だらだらとしたあとどこへゆこうかとかんがえながらだらだらと部屋
2024.07.28
立っているだけなのになぜこんなにも立っているのもつらい世の中
OSをアップグレードしていないせいで処理落ちしている社会
ゆっくりとよい夢をみてねむりたいときにかぎってみるわるい夢
のみものをごくりとのんでいるときのごくりと喉をとおるのみもの
もしかして火星人かもしれなくてつたわりませんわたしのはなし
海的などこかへいって波的ななにかにそっとさらわれたいよ
さっきからずっとあるいているけれどわたしはどこへゆけるのだろう
2024.07.21
あたたかいひとになろうとしてみてもわたしのなかにある冷凍庫
たくさんのひとと話したあとにくるあんまり話したくないかんじ
はなれてるふたりの影がすこしずつ近づいてきてやがてかさなる
鳥なのにうたっていない鳥がいてわたしはうたう鳥になりたい
なんとなくなにかのことを待っている夏のにおいのしている部屋で
いっぴきが鳴いているっていうよりも森ぜんたいが鳴いている夏
ひとごみのなかをあるいているわたしごみのひとつとして街をゆく
2024.07.14
パソコンにピアノの音をひとつずつ並べているとぽつぽつの雨
東京語しかしゃべれないくせに僕 アトランタ語のうたにうたれる
目のまえの世界をオフにするためにわたしのなかのスイッチを切る
ひととして生きているっていうことは生きているっていうことかなあ
何もないところにわたしやってきて何もないってことをしている
その先に書いてあるもの読みたくてそっとあなたのページをめくる
ぼんやりとしているときのぼんやりとしているときのぼんやり頭
2024.07.07
こんなものいったい誰がのぞんだのだろうっていうかんじの景色
おたがいをみつめあってるカップルがみつめあってるおたがいの顔
ここにあるリアルを生きるリアルさにいまいち欠けているこのリアル
わたしからあなたをとってしまったらいったいなにがのこるのだろう
ものすごいはやさで日々がやってきてすごいはやさで去ってゆきます
生きているかとおもったら死んでいるかとおもったらまだ生きている
ふるさとの駅にひとりでおりたってニューバランスでその土を踏む
2024.06.30
左手をぷらんぷらんとさせながら右手をぷらんぷらんとさせる
ひとのこときらいだなってなっているときに隣にいてくれたひと
友だちのひとりもいない道のりをとぼとぼいつもあるいています
ぽっかりとこころに穴があいていていったい誰にあけられた穴
おしゃべりをずっとしているひとたちの隣でずっとだまっています
人間がひっきりなしにしゃべってるスマートフォンの画面のなかで
意味のあるかんじのことを言っているかんじのひとの言っている意味
2024.06.23
はいいろのビルにまわりをかこまれて地平をすべてうばわれている
アスファルト蹴飛ばしながらどこまでもゆきますわたし自身の足で
なんとなくやるきのでない一日をやるきのでないままやりすごす
あさおきて鏡のなかをみてみると鏡のなかのやつにみられる
せともので茶をたしなんでいるときのかつてのせとの土のてざわり
まっくろに埋めたてられたふるさとの大地のしたでねむってる骨
これでもかこれでもかっていうくらいわたしの傘にあたってる雨
2024.06.16
がしがしと考えごとをしたあとのストローの先がしがしである
あなたとのあいだの距離がゆっくりと近くなったり遠くなったり
青春をおもいだそうとしてみてもまっくろに塗りつぶされている
にんげんのふりをしながらたくさんのにんげんのいる街にとけこむ
ブランコにゆれてゆらゆらかんがえる何をなくしてしまったのかを
あの空のむこうにみえる風景をいつかひとりでみにゆくつもり
ひよどりが庭でしきりに鳴いていてそれでも終わることのない夢