anriokabe.com / 短歌を詠む

2024.10.27
人間がごちゃごちゃとしている街をごちゃごちゃとした頭であるく
知っている街をあるいているけれど知っているひとどこにもいない
さみしさを飲みこんだあと酒くさい息といっしょに吐きだしている
わたしもうなんにもしたくないのですなんにもしたくないのですの日
おてんとうさまのにおいのおふとんに包まれながらねむっています
どうやって息をしろっていうのですこんなつめたい空気のなかで
食べたいとおもったものを食べているわたし自由のどうぶつだから
2024.10.20
思春期のことをいまでもおもいだすいらいらと舌打ちをしながら
もういちどやりなおそうとおもってもほとんどのことやりなおせない
傷つけて傷つけられているうちにからだのそこらじゅう傷だらけ
トンネルをとおりぬけてもそこにあるものはいつもとおなじ風景
にんげんが2本の足をみぎひだりみぎひだりってうごかしている
にんげんはまるで地面のほとんどを自分のものであるかのように
ほほほほと鳴いてる鳥のほほほほと鳴いてる声のほほほほの午後
2024.10.13
たらたらと前をあるいているひとの後をあるいているたらたらと
またいつかまたいつかって言いながらいつまでもいつまでも手をふる
わたしたちみんなきれいだちりぢりになってひとりで輝いていて
いつまでもループしている映像をみている日々がループしている
いつまでも犬がみているいつまでも犬がみているいつまでも犬
なぜ海をよごすのだろうわたしたちかつてそこからやってきたのに
ひとりごと言ってるときのひとりごと言ってるひとであるということ
2024.10.06
だれだろうこんな夜中にこんこんとわたしのドアをノックするのは
さあさあの雨がだんだんざあざあになってだんだんざんざんになる
わたしたちはなればなれになりながらばらばらにみるばらばらの夢
生きているみたいに生きているときのいまいち生きていないみたいな
晴れているなあってなってあるいてるよく晴れているなあってなって
あなたとのトーク画面にとりあえずおめでとうっておくって閉じる
自販機にコインをいれてぴかぴかとひかるボタンを押しこんでいる
2024.09.29
いまはもうあなたのいないこの街でわたしはいまも暮らしています
ロッキングチェアにすわってゆらゆらとかんがえているこの先のこと
地下鉄の席にすわってゆらゆらと地下をさまよいつづけるわたし
かあかあとカラスも山へかえるからわたしもかえるところへかえる
ひきだしをみんなひっくり返してもみつけたいものみつからないの
ここにいたひとたちみんないまはもうこの世の中のどこにもいない
ほうじ茶はおばあちゃんちの味だからおばあちゃんちの味のほうじ茶
2024.09.22
空中に浮かんだままのメロディーのひとつひとつにコードをつける
真夜中の森はざわざわざわめいてわたしを闇のなかへいざなう
いやなことみんな忘れてしまいたい忘れてしまいたいいやなこと
オンラインゲームの中にいつもいるゲームの外にいたくないから
よくみると車のなかにひとがいてわたしのことをみているのです
森にすむ生きものみんな追いだしてあいたところに人間がすむ
なつかしいうたをうたっておもいだすみんなでうたをうたった日々を
2024.09.15
ねころがりながらみている暗やみのなかでてんめつしているひかり
なにもかもくさってしまう真夏日のだんだんくさりつつあるわたし
どこまでも逃げていってもどこまでも逃げていってもそのさきは海
青空のなかで暮らしているひとのことを地べたに立ってみあげる
この街にわたしもいつかうけいれてもらえるときがくるのかな猫
たんたんとやるべきことをやっているただたんたんとやるべきことを
つぎつぎとおそいかかってくる闇をすべてたおしてからねむります
2024.09.08
たんたんとタンパク質をとっているわたしタンパク質のかたまり
いつまでもさなぎのままでいるわたしいつか羽化する日を待ちながら
つけているレンズいまいちあわなくてピントいまいちあわない世界
目のまえのスマートフォンのなかにある外をながめているだけの夜
いっすいもねむれなかった夜中じゅう目のまえにある黒いかたまり
クッキングヒーターの火でのろのろと鍋の中身をあたためている
そこにある窓のむこうにみえているおそらにういているおつきさま
2024.09.01
道ばたで干からびているわたしたちみたいに干からびているみみず
草も木もみんなぐんぐんのびてゆくわたしのことを置きざりにして
ゆっくりとやすむわたしの太ももの上でゆっくりやすむありんこ
立ちつくすわたしになにか大切なことをつたえているような雨
うしろからずんずんやってくるものに先をゆずっている帰り道
ここにある風をかんじるあしたにはみんなどこかへ消えてゆくから
ぱちぱちとわたしのなかで鳴っている花火のおとをきいている夏
2024.08.25
むこうから人間さんがやってきてこんにちはって言って去ります
まっしろの部屋にすわって待っているわたしの番がやってくるのを
うえにある空気がとてもおもたくてからだをおこすことができない
あいまいにわらってわたしあいまいにあらゆることをやりすごします
にんげんにかんすることはあきらめて雲をかぞえている昼下がり
どうしたらここから外にでられるのだろう遠くへゆけるのだろう
どんよりと世界は雲でおおわれてどこへもぼくはゆけないだろう