2022.12.11_2
冷えきったベンチにすわる僕の手も冷えきっていていつも通りだ
胃のなかのものをたっぷんたっぷんとしながら船のようにねむった
むこうまで見渡せるんじゃないかってくらい心に穴があいてる
アスファルトめくればそこにびっしりと貼りついている人間の骨
東京のまんまんなかにそそりたつビルからひとがあふれ出てくる
レコードに刻まれている感情のゆらゆらとした揺れをたのしむ
とんできた言葉は胸にぐっさりと刺さってふかい傷をのこした
2022.12.11_1
目の奥にあるものみんなさみしくていつもさみしい夢をみている
僕たちは競争に勝つことだけを教えこまれてきた子どもたち
朝ごはんいっしょくぶんのカロリーでいちにちぶんの仕事をこなす
地下にある穴からひとがわらわらと出てきて四方八方に散る
遠くからすごい速さでやってきてすれちがってる電車と電車
壁なんてするするすべてすりぬけてやりますよっていうように猫
にわとりが一生かけてたくわえたタンパク質をいただいている
2022.12.04_2
うなだれたかたちのままでゆらゆらと運ばれてゆく都市生活者
春がくるまでは毛布にまるまってしずかに息をしているつもり
おたがいに気づかなかったふりをして口笛ふいてそれでお別れ
この街のあらゆるものをイヤホンでノイズキャンセルしながらあるく
ビニールのせまっくるしい袋から逃げだしたくてたまらないネギ
どこまでもダンボール箱つみあげて僕しかいない僕の王国
いつまでも沈んでいるとどうやって息をするのかわからなくなる
2022.12.04_1
どうどうと道の真ん中あるいてるハトとはじっこあるいてるヒト
ほんとうに明日がやってくるという保証どこにもないままねむる
コンビニのプラスチックのストローで吸いこんでいる黒い液体
ポケットにフィクションだけをつめこんで超えてみせるよこの現実も
ほんものの空をまったくみもせずに天気アプリのほうをみている
かつてこの島にはうたがみちていて僕たち愛しあっていたのに
体温はヒートテックで保たれてほらひとりでも寒くないでしょ
2022.11.27_2
行き場所をうしなっているたましいのようにぼんやりひかる街灯
プルタブをぺんぺん鳴らしながらゆくなんかリズムのない路地裏を
それぞれのところからみなやってきてまたそれぞれのところへ帰る
うすれゆく意識のなかでおもいだす今まで会ったひとたちのこと
まあまあな感じのこんな日の夜をネオンサインで彩られても
そういえば忘れていたなこの島にあふれるあまい森のかおりを
思い出をすこしひらいてひとつずつ眺めたあとに箱にしまった
2022.11.27_1
ぴったりと枕に頭くっついてそのまま剥がれなくなっちゃった
ぷっつりとふいにブラックアウトした画面にうかぶ顔のない顔
ねむれないねむれないって夜中じゅうあっちにごろりこっちにごろり
動かなくなってきている脳みそをカフェイン漬けにしてぶんまわす
そこにある壁をむこうへ押しやるとむしろこちらが押しかえされる
ふらふらと僕のあるいている道に舞いおりてくるひとつの枯れ葉
土という土にきちんとフタをして街はきちんとしたフリをする
2022.11.20_2
思春期のころのゲームをやっといま大人になってからクリアする
なぜこんなところで僕はつったっているのだろうか傘をかかえて
サッカーをサボって空をながめてたころとなんにも変わんない空
こんにちは こんにちはって伝えてもそこには誰もいませんでした
パトカーのゆっくり通りすぎてゆくあとの夜道をゆっくりとゆく
ごしごしと窓をふいてもいつまでも曇ったままの窓があります
くりかえしうつるビールのCMの中のひとたちいつも楽しげ
2022.11.20_1
僕たちに名前がつけられるまえの記憶をとりもどすための旅
ホームからカラオケ館のきらきらとひかるまぶしい部屋をみている
昨日まで咲いていたものことごとく道に落っこちていてさみしい
トラックのピッピッピっていう音にあわせて僕もピッピッピって
ぞろぞろと集まってきた人間がエレベーターで運ばれてゆく
自動車のヘッドライトにぱっきりと照らされながらわたる信号
ほっぺたにいつもニキビをつくってたころとおんなじ洗顔フォーム
2022.11.13_2
僕だけが仲間はずれになっている感じになっている渋谷駅
食パンのまんなかにある空白をバターで埋めているだけの朝
検索のトップにあった映像のとおりにつくるだし巻きたまご
かなしみにバンドエイドをぺったりと貼って自然に治るのを待つ
友だちのかえってこない公園でいつまでもいつまでも待ってる
コンタクトレンズを売っている店で2か月分の視力を買った
ふるさとの味を持たない僕たちのひとりぼっちでつくるみそ汁
2022.11.13_1
乱暴に踏みつけられた手のひらのように散らばるイチョウの葉っぱ
しっかりといつもは鍵をしめている記憶のドアがひらいてる夜
あっちからたくさん鳥がやってきてあっちのほうへ行ってしまった
巣へもどる道をわすれた僕たちがうろうろしてる 二足歩行で
今日くらい止めてくれてもいいのではないのでしょうか冷たい雨を
ダウンから羽毛がひとつとびだして風のなかへと帰っていった
痛みなら鎮痛剤でごまかして生きながらえてみせます今日も