anriokabe.com / 短歌を詠む

2023.02.05
真夜中に波うっているまっくろの感情に身をまかせてねむる
深夜だというのに僕のそこだけがまっぴるまってくらい明るい
そこにあるルールを単にまもってるだけのロボットまたは人間
とてもよく訓練された足つきでみんないつもの位置におさまる
今よりも昔のほうがいいなんて思わないけど 思わないけど
いつだってあっちの空は晴れていてこっちの空はくもりっぱなし
赤だったものがとつぜん青になる かと思ったらまた赤になる
2023.01.29
しっかりとシートベルトを締めながらしっかり前を向いているひと
ひとごみのなかのひとりになっていて安心してる なんか結局
快速ですいすいかえるひとたちのあとをとろとろ鈍行でゆく
まっくろの池をまわっているときに向こう側からまっくろの顔
真夜中のドンキホーテにあらわれてエスカレーターぐんぐんあがる
意味もなくねむって意味もなく起きてまた意味もなくねむって起きる
いつかまたここで会おうよ おたがいの顔も忘れてしまったころに
2023.01.22
生きるのは合法なのになぜ道で寝っころがっちゃいけないのです?
いつまでもかえってこない返信の画面をなんどなんどもさわる
這いまわる電車は腹にたっぷりと人間どもをたくわえながら
つぎつぎにうつしだされる僕だけがうつっていない集合写真
これまでのことをもんもん考えていたらまっくろ焦げのたまねぎ
南からきたひとみんな駅ビルのなかをとおって北へとむかう
きっちりとコンクリートで固めてる 川をきっちりコンクリートで
2023.01.15
アイフォンでYMOを聴きながらたそがれているTOKYOをゆく
不自然なくらい雨水すいこんで黒々としているアスファルト
たくさんの同じかたちのタクシーが等間隔にならんでいます
うしろから撃たれるまでは仲間だと思っていたよみんなのことを
のそのそと出てきて夜のコンビニのATMでお金をおろす
アメリカのインターネットサービスで日本のルート検索をする
足もとを注意している 注意することは他にもあるはずだけど
2023.01.08
店員とまったく会話しなくても買いたいものを買えるシステム
ながれてる曲の言葉のなにひとつ響いてこない 僕のほうまで
足だけがあるきまわっている音のしている闇のなかにくるまる
人間と会話しているはずなのにたまにロボットかなって思う
なつかしいホームに立ってなつかしい日々をひとりでながめています
なまぬるいお湯につかってひたひたとスマホのニュース画面にふれる
虫かごに放りこまれた虫たちは相手を殺すところまでやる
2023.01.01
ユニクロのオレンジ色のジャケットにつつまれながら灰色の街
自動車にのってるひとがアクセルを離したすきに急いでわたる
脳みその奥のほうからたらたらと鼻水たれている昼下がり
白米を肩にかついでよいこらしょよいこらしょって家までかえる
真夜中のボタンを押せばいっせいに赤から青へかわる信号
僕たちのこころのなかのどうしても塗りつぶせないままの空白
ぺらぺらの皮をむいてもぺらぺらの僕がそこにはいるだけである
2022.12.25_2
高円寺駅からそっとついてきた波のねいろにみたされる部屋
透明のパーテーションに挟まれてひっそり息をひそめています
どこかから冷たい水がやってきてそれをそのままごくごく飲んだ
毒のある言葉をもろにあたまから浴びてしまって動けなくなる
どの駅をおりてもおなじコンビニがあるからおなじコンビニにいる
大量につくられているTシャツのMにぴったりおさまっている
アメリカの年間ベストアルバムをひもときながらすする日本茶
2022.12.25_1
噛みあわせ悪くてうまく世の中のりくつを咀嚼できないでいる
カロリーをとるためだけに買いましたマクドナルドで売ってるものを
スケボーの上からみればゲレンデのようだいつもの退屈な道
そこにある窓からみえているものをみているだけですぎてゆく日々
ならんでるひとたちみんなうつむいてインターネット空間にいる
コンビニのトイレのドアのポスターのなかにひろがる海をみている
僕たちの破滅をつげるかのようにビニール袋 ばさばさ舞って
2022.12.18_2
亡霊のように僕たちいつまでも街をふらふらただよっている
目のなかにプラスチックを入れないと目としてちゃんと機能しない目
雨よふれ 雨よふれこの僕たちのよごれを洗いながしておくれ
クリスマス仕様になっている街をそうなってない僕がゆきます
ほんとうにいるなら僕のところまでやってきやがれサンタクロース
だんだんと疎遠になってゆくひとのだんだんうすくなってゆく顔
真夜中のガードレールに乗っかって向こうからくるものをみている
2022.12.18_1
まっくろの雨がぼたぼた落ちてきて僕のすべてをまっくろにする
ラブソングばかりながれる店内でおひとりさまの王様ランチ
今日もまたコーヒー飲めるぞっていう勢いだけで起きあがります
前にいる僕をみえないものとしてあつかうひとのみているスマホ
ほんとうにこんなに青いならきっとそりゃあ楽しい青春だろう
ひんやりと冷えきっているアイフォンに体温のない返信がくる
なんかいつ行ってもなんかありそうな気がするだけの何もない街