anriokabe.com / 短歌を詠む

2023.04.16
よるふかく憂うつさんがやってきてわたしのドアをノックしている
下にいる人間どものことなんて知らんぷりして咲きほこる花
地面から切りはなされたにんげんは根をはることができずに枯れる
あおむけになって手足を投げだして都会のすみにころがっている
悔しさのひとつひとつを噛みしめていたら奥歯を割ってしまった
ハトがきてあの懐かしいメロディーをわたしのためにうたってくれる
りんごんとあるとき鐘が鳴りひびきすべて崩れてゆくのだろうか
2023.04.09
真夜中のだあれもいない空間にむかってただいまと言ってみる
選ばれたものたちにしかきこえない低音域でかなでる孤独
捨てている僕もいつかは捨てられるだろうか燃えるごみと一緒に
よくみえるメガネをかけて善いことと善くないことをよくみわけます
なぜこんな朝っぱらから鳥たちはあんなに楽しそうに鳴いてる
グーグルの言ったとおりにあるいたら言ったとおりの時間についた
ふとんからむっくり顔をつきだしてスマートフォンと向きあっている
2023.04.02
ほんとうのわたしはここにいないからわたしを探さないでください
わたくしはいったいなんの罪でこの檻に閉じこめられたのだろう
アイフォンのなかに入っている鳥のさえずり声に起こされている
こんなにもひとりぼっちの情熱をこんなところであたためている
だんだんと目が慣れてきてみえてくる今までみえていなかったもの
咲きほこる花のとなりをずるずると鼻をすすってとおりすぎます
まっくらの穴にむかってまっすぐにエレベーターはおりてゆきます
2023.03.26
どうやってあんなところにあんなもの建てたのだろう何のつもりで
カアカアとカラスが鳴いてカアカアになってしまったわたしの心
遠くからつれてこられて水槽のなかをさまよいつづける魚
ずんずんと鳴ってるくるま向こうからずんずんやってくるやってくる
居酒屋の赤ちょうちんに照らされて真っ赤に染まる酔っぱらいたち
うしろからターボモードで乾かせばターボモードになっている髪
暗やみのなかで光っているものをつかまえようとして手をのばす
2023.03.19
1分も持たないだろうもしひとを電子レンジに閉じこめたなら
ばきばきに分断してる僕たちのコミュニケーションブレイクダウン
ひとびとはひとつしかない出口へとむかってひとを押しのけながら
虫たちはいっかいきりの人生をちからいっぱい生きていました
不公平だよねいつでも傷つけたほうは忘れてしまうのだから
ほんとうは左にまがるべき道を右にまがってしまったのです
充電がなくなるまでの数分のあいだ世界とつながっていた
2023.03.12
1日の2分の1のビタミンをひとつのこらず血にながしこむ
つり革につるされているひとの手につるされているひとの肉体
おいオレはここにいるぞというように這いつくばって鳴いている虫
地下鉄で息をひそめる 僕たちはぬらりと電気うなぎのように
こぎれいに整えられている街のドブのにおいのする場所に立つ
下界から切りはなされている部屋でいつも唱えています呪文を
まっしろの壁にまわりをかこまれてまるまっているホモサピエンス
2023.03.05
ふるさとの訛りをなくす ふるさとをなくす自分の言葉をなくす
人間になれたらいいね 人間にいつかほんとになれたらいいね
階段でたそがれている僕のことめっちゃ照らしてくるね太陽
曇天の下をいっぽもでることもできずに今日という日を終える
シャンプーを詰め替え用のパックから出してそのまま頭にのせる
うそつきの笛のねいろがきこえたらそれは世界の終わりの合図
つぎつぎにアルゴリズムがレコメンドする映像をつぎつぎにみる
2023.02.26
歩いたら死なないとこと死ぬとこがあって死なないとこを歩いた
アメリカのホームドラマをみたあとの鏡のなかにいるアジア顔
ふるさとを失ったまま僕たちは今日もどこかへ流れついてる
あのドアをあけたらそこにひろがっているのだろうか明日の世界
なぜだろう空がこんなに青いのは 僕がこんなに青くないのは
手をつなぎあってふたつの体温がやがてひとつになってゆくまで
もし星が落っこちてきて僕たちをバラバラにしてしまうとしても
2023.02.19
そこに巣をつくるわけにもいかなくて森をはなれて街へともどる
ゆらゆらと闇からひとがあらわれてUターンしてまた消えてゆく
泣きさけびながらこの世にやってきて涙をぬぐいながら生きます
コンビニにかこまれている僕たちのからだはいつもコンビニまみれ
風という風をあつめてどこまでもわたしは翔けてゆくつもりです
タブレット片手に夜のまんなかで短歌を詠んでいましたいつも
びんづめの言葉をいつも僕たちはひとりで海に投げいれている
2023.02.12
歩いても歩いてもなおアスファルトばかりわたしの前にひろがる
すやすやとふたりはねむるこの星のかなしみすべて抱きしめながら
エラ呼吸しながら水の底にある街をしずかにただよっている
道ばたにマスクがひとつ落ちていて落としたひとはそこにはいない
グローバル企業ぐんぐんひろがってゆくよ地球のすみずみにまで
食べたいと思ったものを買ってきて食べたいなってなったら食べる
とりあえず今日はなんにもしないっていうことだけを決めた休日