anriokabe.com / 短歌を詠む

2025.03.16
あなたとはこころの距離がひろがってことばの距離もひろがっている
あさはやくおきてしまってぼんやりとわたしのなかのあさをながめる
なにもかも消えてしまえばいいなってなっているとき夕焼けきれい
わたしたち楽しいこともはんぶんこ悲しいこともはんぶんこする
どうみてもこわれつつある世の中のこわれていないところをさがす
もうにどと会うことのないひとたちと悪夢のなかでもういちど会う
核家族だったものたちくりかえしぶんれつをしたのち核個人
2025.03.09
あしもとがいつもぐらぐらしてるからまっすぐ立っていられないです
ふゆのよるふたりでおなじ空をみてふたりでおなじ世界にはいる
からっぽのあたまになってあるいてる足のあるいてゆくところまで
なぜいつもひとりぼっちになる道をえらんでしまう足なのだろう
傷つけたほうはわすれてしまうけど傷つけられたほうの傷あと
たいくつでたまらないのでたいくつなことはわすれて旅にでましょう
にんげんのふりをしているひとたちのみせかけだけのにんげんらしさ
2025.03.02
虫さんがだんだんみんな起きだしているからぼくも起きだしている
人として生きているのが人生であるならこれは人生ですか?
春ですね あなたとはもうさよならをしなくてはならない春ですね
どうにでもなれってなってあるいてるどうにでもなれどうにでもなれ
まっくろに塗りつぶされているせいであなたの顔をおもいだせない
思春期をおもいだしてもただ苦いだけで甘くも酸っぱくもない
みんなとはリズムがいつも合わなくて自分自身のリズムであるく
2025.02.23
友だちのひとりもいない人生をひとりであるきまわっています
だんだんとあいだの溝がひろがってあなたの声はもうきこえない
生きているときはいろいろあるけれどいつかはみんな一緒にあの世
自動車がひとのあるいているよこをひとをころせる速度ではしる
のんびりとのびをしているのらねこのようにわたしも生きてゆけたら
わたしたちわかりあえなくなるばかり言葉をいくらつみかさねても
あさおきてわたしがいなくなってたらわたしのことはわすれてほしい
2025.02.16
あといくつかなしい夜をのりこえてわたしはどこへゆけるのだろう
こんぽんのところからぼくぽっきりと折れてしまってもうもどらない
おそらから落っこちてきた雨つぶのひとつわたしのあたまにあたる
どろどろとしているものが脳みその奥からわいてきている深夜
あたたかいこころにふれているときのわたしのこころあたたかいです
いろいろなひとにいままで会ったけどいまは会えなくなってしまった
どのくらいおおきな声でとどけたらあなたに声がとどくのだろう
2025.02.09
おふとんにつつまれながらねているとまるで一人じゃないみたいです
あまりにもたくさんのひとあまりにもたくさんのひといるのはやめて
ぼくがその気にさえなればことごとく終わらせられる 横断歩道
ねむいからねるしたべたいからたべるわたし生きたいから生きている
ひとびとをみくだすためにひとよりも高いところに立っているひと
これまでにあるいた距離をかんがえるあなたとともにあるいた距離を
ぼんやりと部屋でながめるぼくたちの仲のよかったころのおもいで
2025.02.02
暗やみのなかをゆっくりあるいてるスマホのあかりだけをたよりに
なにもないところにずっと立っていてわたしはなにをしたいのだろう
雪よふれ雪よふれふれ雪よふれわたしをおおいかくしておくれ
にんげんにかこまれながら息をしているのはとても息がくるしい
ねむってるあなたのことをかんがえるねむってるそのあなたの顔を
あなたからとどいた言葉なにひとつわたしのこころまでとどかない
知っているひとに会わずに知っている街をあるいているここちよさ
2025.01.26
わたくしはわたくしという牢獄のなかにとらわれているわたくし
すみっこに小さくなってすわってる大きなヘッドホンをしながら
思春期のころの夢っていつみてもみんなにいじめられている夢
たくさんの食べたいものを食べたあとたくさんの飲みたいものを飲む
おもいでのなかであなたは生きていてわたしのことをいつもみている
なにもかもなんでもいいのかもしれずなにもかもなにもかも投げだす
とおくまでわたしは行ってみたいからひとりで行ってみることにする
2025.01.19
さっきからわたしの足を踏んでいるあなたの足をどけてください
おおごえでいつもさけんでいるせいでいつも嫌われもののひよどり
にんげんにたくさん会ったあとにくる会いたくなさはなんなんだろう
轟音がわたしのなかで鳴っていてあなたの声がよくきこえない
わたしたちおなじ世界にいるようでまったくおなじ世界にいない
ふざけんなふざけんなってなりながらふざけてるこの世の中をゆく
おふとんにくるまりながら世の中があたたかくなるのを待っている
2025.01.12
あっちからこっちまできてこっちからあっちまできてまたこっちまで
にんげんであるというならにんげんであるというそのこころをみせろ
ほんとうにあなたがここにいたのかもわからなくなるもういないから
コンビニで買いたいものを買っている買いたいものを売っているから
ふるさとにむかしからある食堂でむかしからあるメニューをたべる
そこにある窓からひかり差してきてわたしのすわるところを照らす
ねむねむるねむねむねむるねむねむるねむねむねむるねむねむねむる